経営計画が実行されない、補助金ありきで計画が歪む——その先にある支援
経営計画を作ったが誰も動かない。資金面の裏付けが弱く、絵に描いた餅で終わる。補助金ありきで計画が歪んでいる。こうした課題を抱える中小企業は少なくありません。
中小企業診断士・池尻直人さんは、経営者の思いの言語化から中期経営計画の策定、資金調達、そして実行管理までを一気通貫で担います。前編では経営企画を外部に持つ意義と、右腕不在のリスクを伺いました。後編では、実際にどのように経営を言語化し、中期経営計画としてまとめ、資金調達や実行支援まで伴走されているのか。その具体的なプロセスを伺いました。
■ 事業者情報
| 事務所名 | トラスタライズ総研株式会社 |
| 代表者 | 池尻 直人(中小企業診断士・米国公認会計士) |
| 事業内容 | 経営コンサルティング、経営計画・策定支援、経営企画室代行 等 |
| 所在地 | 〒107-0061 東京都港区北青山一丁目3番1号 アールキューブ青山3階 |
| 連絡先 | 03-6774-7746 / info@trustalize.co.jp |
| 営業時間 | 平日 9:00〜18:00(土日祝定休) |
| ホームページ | https://trustalize.co.jp/ |
ブリヂストンでの経験と、二つの資格が生む強み
――ブリヂストン在籍時代の経験のうち、中小企業支援に活かせると感じた点を教えてください。
大きく二つあります。一つは、大手企業が成功を収めてきた着眼点や検討ポイントを把握していることで、中小企業が経営計画に盛り込むべき要素を選別できるようになったことです。
もう一つは、トップの負担を減らしつつ、トップの意向を反映させるための組織運営方法を学んだ点です。大きな組織では「社長の考えをどうやって現場に伝えるか」が常に課題になります。その経験が、そのまま中小企業の経営企画支援に活きています。
――米国公認会計士と中小企業診断士の両方の資格を持つことで、支援の幅はどのように広がりますか。
両方をスコープ(作業範囲)に入れることで、根拠を持って語れるのが最大の強みです。どんなに良い計画を立てても、資金がなければ絵に描いた餅に終わります。「この投資は経営として本当に必要か」「ここで補助金を使うのが本当に正しいのか」といった資金戦略から一緒に考えられます。資金が厳しい場合でも、最適な融資戦略を一緒に考えたり、補助金を代替案として提示したりと、複数の選択肢を持ってフラットに提案できる点が強みですね。
中期経営計画の作り方——言語化から実行管理まで
――実際の支援はどのようなところから始まるのでしょうか。
まず経営者の思いを5W1Hを使って言語化することが最初のステップです。特に新しい経営者は「従業員に優しい会社にしたい」「より良い未来を作りたい」といった漠然とした思いを持っていますが、これだけでは現場は動けません。誰に・何を・いつまでに・どのように・なぜ、という軸で言葉にしていく。それが出発点になります。
――言語化の次のステップはどのように進むのですか。
理想の将来像と現状とのギャップを明らかにして、そこから「真の課題」を見つけます。「売上が上がらない」とご相談いただいても、実は組織の問題だったり、情報共有の問題だったりすることは多いです。表面上の問題に手を打っても解決しません。
真の課題が明確になったら、課題解決のための施策・担当者・納期・予算を含むアクションプランを整理・具体化して、これを中期経営計画としてまとめていきます。そこから先は、PDCAを一緒に回しながら、計画を動かし続ける支援をしています。
――相談に来る前に経営者が試みていた、うまくいかなかった対処法として、よく聞くパターンはありますか。
よくある事例として二つあります。一つは、ビジネス書を参考に経営計画のフォーマットに自力で思いついたことを入れてみるものの、着眼点やバランスが不十分であるケース。もう一つは、コンサルティング会社に相談しても助言だけで終わり、実行まで伴わないケースです。
どちらも、計画と実行が切り離されてしまっていることが共通しています。こうした分断を解消し、計画を実行に移していくためには、実行体制の整備とあわせて、資金面の裏付けも欠かせません。
補助金は、事業拡大に「付随するもの」
――累計10億円超の補助金獲得実績をお持ちです。補助金支援において大切にしているポリシーを教えてください。
「お金をもらうための計画策定はやるべきではない」というのが私のポリシーです。あくまで事業拡大に役立つ取り組みが先にあって、そこに対して国が出す補助金を「付随」として活用するという順番が正しいと考えています。補助金のために事業計画を作ると、補助期間が終わった瞬間に何も残らなくなります。
――印象に残っている補助金・融資サポートの案件を教えてください。
従来のサービスと比べ、環境への貢献が非常に大きい新サービスの開発を進める地方企業を支援した案件です。社会的に意義のある取り組みでしたが、どう事業化するか、どの補助金を活用するかが整理できていませんでした。事業計画の策定から環境省の補助金の選定、環境改善へのインパクトの計算、そしてプレゼンテーション審査を乗り越えるための準備まで、一貫して伴走しました。採択後も計画の実行管理まで支援しています。
事業承継した社長が抱える悩みと、中期経営計画の役割
――事業承継後の社長が抱える課題について、支援の現場でよく感じることはありますか。
新しい社長の考えが社内に伝わっていないことへの不安は、非常によく聞きます。古参社員との意見の不一致や、社内での地位を確立していくプレッシャーもあります。後継者社長の集まりなどでも問題は共有されますが、具体的な解決策や実務的なノウハウを持っていないことが多いというのが現状です。こういった場合は、中期経営計画のような書面を作り、会社のビジョンや戦略を社内に明確に共有することが有効です。「社長が何を考えているか」が見える化されるだけで、組織の動きが変わります。
支援した企業の変化
――実際に支援して、会社が変わったと感じる場面はどんなときですか。
一番印象に残っているのは、経営者が「中長期を見据えた会社の展望」を、数字に基づいた計画としてちゃんと語れるようになったという変化です。成り行き任せではなく、軌道修正しながら経営者の描いた着地点に近づいたり、それを超えたりするケースが少しずつ出てきています。
ある顧客先では、年間の売上・利益計画の達成度合いや、キャッシュ残高などを毎月一緒に確認・議論するようにしています。経営者にとって、経営状況が数値で明確に見えるようになることの効果は大きいです。「3年間で売上を1.5倍増加させる」というような、その会社にとってハードルの高い数値目標であっても、着実にステップを刻んで達成することができました。そして何より、手元の資金が常に見えるようになったことで、必要な投資に恐れることなく踏み切れるようになったが大きいと、その社長は仰られていました。
「経営を、かたちにする」
――最後に、池尻さんが大切にされている言葉をお聞かせください。
社長の頭の中にある経営を、言葉にし、計画にし、仕組みにし、動かす。そのすべてがそろうとき、経営が「かたち」になります。
経営者の皆さんは真面目に事業に向き合っているからこそ、どうしても1人で抱え込んでしまいがちです。経営を形にするということは、自分なりの経営スタイルを築いて実行していくという、1人で片付けるには重たいテーマです。だからこそ、まずは思い切って外部の専門家に話してみてください。スピードの面でもコストパフォーマンスの面でも、有効な解決策が見つかるはずです。
■ 専門家プロフィール
トラスタライズ総研株式会社 代表取締役 池尻 直人(いけじり なおと)
株式会社ブリヂストンにて約16年間、経営企画・マーケティングや新規事業開発など経営の中枢を担った実務経験を持つ中小企業診断士。米国公認会計士としての知見を活かした資金調達や、PDCAを回す経営計画の実行支援を得意とする。経営者と共に成長を目指し、寄り添う「社外経営企画室長・経営企画パートナー」として行う伴走支援を信条としており、経営企画の支援実績は40社超。


